2015.05.14

下戸は勘定に入れません 西澤保彦

下戸は勘定に入れません
西澤 保彦
中央公論新社
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巻末の情報によると、本作は西澤保彦61冊目の作品だそうで、えっそんなに、と驚いた。入れ込んでいたある時期には、順追い読んでいた作家である。それがいつの間にやら、だ。書目を指でなぞりながら、その未読の山に頭を抱えてしまう。

同じ日付の同じ曜日、その場に居合わせ、同じ酒を飲んでいた者を”道ずれ”に発動する「タイムスリップ」能力をもった男の話である。条件がそろうと、いかんともし難く能力が発動するというのが面白い。この大学准教授が、旧友を道連れに学生時代へとタイムスリップしてしまい、事件が幕を開ける。

西澤保彦の魅力はなんと言っても、その作品世界のルールであるSF設定を、驚くほど分かりやすく説明してしまう術にある。謎解きの勘所であるルール説明であり、タイムスリップという不思議な体験を、「どうやらそういうことのようだ」とあっさり締めくくってしまう大胆さ。それでいて、読者を妙に納得させてしまうのだから、舌を巻くほかない。

一人娘の出生の秘密を巡り、浮かんでは消える疑問、疑問。先読みできそうで、させてもらえない。熟練の技が光る。出生に係るいささか深刻なテーマを大団円に持ち込み、結局コミカル・ミステリーに仕立ててしまう力技も見所だ。


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