2015.06.06

シャングリ・ラ 上下巻 池上永一

シャングリ・ラ 上 (角川文庫)
池上 永一
角川グループパブリッシング
売り上げランキング: 417,739

シャングリ・ラ 下 (角川文庫)
池上 永一
角川グループパブリッシング
売り上げランキング: 380,488

解説者である筒井康隆の言葉を借りれば、池上永一による大作『シャングリ・ラ』は、純然たるアンチ・ユートピア小説であると同時に、温暖化を扱ったポリティカル・フィクションであり、呪術的な異世界ファンタジーであり、サイバーパンクである。文庫本上下巻。詰めにつめたり、1,000頁。いやはや書きましたなあと、感心しきりである。

「森」に侵される文明を描いた先行作品として、宮﨑駿の『風の谷のナウシカ』がある。あちらは、黄昏を生きる世界が舞台であった。一方、『シャングリ・ラ』は草木萌えいづる季節の物語なのだろう、驚くほどパワフルな登場人物たち、天井知らずのマネーゲーム、植物と大地のふつふつとしたエネルギーが、ただならぬ勢いで読者を襲う。

戦い破れた人物がくり返し復活するところなど、不満がないわけではない。しかし結局のところ、私は最後の一行にやられてしまった。なぜか。それは、この小説ははじめから「神話」だった、ということが、そこに端的に示されていたからなのである。なるほど、はちゃめちゃなお祭り騒ぎは「神話」ならでは、と独りごちる。「始まり」と「終わり」の同居する美しい締めくくりだと思う。

2006年に『SFが読みたい!国内編』の第3位を獲得、2009年にはアニメ化もされており、当時の人気も窺える。


コメント

非公開コメント