2015.07.03

<運ぶヒト>の人類学 川田順造

〈運ぶヒト〉の人類学 (岩波新書)
川田 順造
岩波書店
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本書は、<運ぶ>文化を「文化の三角測量」で以ってして、探り知ろうと書かれた。「文化の三角測量」とは、まったく異なる3つの文化を比較するという、地測に着想を得、著者があみ出した手法である。ここでは主に、アフリカ、フランス、日本の3点による。

文字は少し大きめで行間もゆったりとってあり、教養新書にしては、ずいぶんのんびりした印象をうける。しかし、読み応えは深く、思いがけない広がりもみせて、面白い。この本、<運ぶヒト>のことはもちろん、枝葉の部分も良いのだ。

匂いを嗅ぐ仕草のこと。二重文節言語のこと。日常会話における相づちのこと。「はたらく」ということ。<運ぶヒト>というテーマからあふれた零れもの。行と行の間に滲む小さな記述から、目が離せなくなってしまう。テーマ以上に細部が光るのは、秀作の証であろう。

締めくくりに著者は、“ホモ・ポルータンス”たちの蠱惑的なエスニック・パレードを、幻視する。

籠いっぱいのオレンジを運ぶメキシコの少年。自家製の籠を頭からさげたブラジルの少女。その後ろには「テル」を背負った鹿児島の少女が続く。西欧グループの行進は、どこか賑やか。ブドウの収穫を終えた農夫。苺やミルク瓶、鮮やかな花を肩からつるした吊り台に並べるパリの行商たち…。

自身の身体で、身の丈に合ったものを運ぶ。人間的な美しさに酔わせてくれる1冊だ。


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