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2016.10.01

名探偵に薔薇を 城平京/創元推理文庫

名探偵に薔薇を (創元推理文庫)
城平 京
東京創元社
売り上げランキング: 28,029

『虚構推理』は大のお気に入り。『名探偵に薔薇を』も気にはなっていて、ようやく読むことができた。

ここに完全犯罪を可能にする毒薬がある。水によく溶け無味無臭。服毒すれば0.1グラムで死に至り、その効果は一時間以上経ってからあらわれる。症状は心不全のそれであり、解剖による検出もほぼ不可能。この毒は<小人地獄>と呼ばれ、赤子を煮詰めて造られる…。

本作は、<小人地獄>をめぐり、ある一家に起こった二つの悲劇を描く。

第一部「メルヘン小人地獄」では、毒薬<小人地獄>の誕生秘話が語られる。どちらかと言うと、サスペンスの色合いが濃いのだけれど、存在しなかったものさえ推理してしまう、瀬川みゆきの名探偵ぶりは必見だ。

第二部「毒杯パズル」は、<誰が、なんのために、毒を盛ったのか>というシンプルな謎解きもので、名探偵の人間的苦悩が全面に押し出される。城平京が学生だった頃の創作が原型らしく、謎解きもテーマも、文句なしに面白い。

肝は、完璧な毒薬というアイデアにある。完全犯罪完璧な毒薬だなんて、ミステリー好きの心くすぐる、おいしいネタだ。ところが、こんなにおいしいネタを用意しておきながら、城平京はそれを「拾わ」ず、あっさり「流し」てしまう。結局、犯人はこの理想的な毒薬を、最も下手な形で使うことになる。もっと上手な使い方があるだろう、って誰もが思う。でも、そこにちゃんと仕掛けがある。犯人がドジを踏むわけではないのが云々、なんだけれど、あんまり書くとネタバレしてしまいそうだ。

完璧な毒薬に練り込まれた人間的不合理。その歪と落差が、読者をあっと言わせ、同時に、作品のテーマと見事に響き合う。こういう魅せ方もあるんだなあ、と思う。

読み終えると、ふとタイトルに立ち帰りたくなるのもいい。素敵なタイトルだ。読む前よりも、ずっといい。こういう小説に凡作はない。

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