2016.11.22

女王はかえらない 降田天/宝島文庫

2015年、第13回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作である。針山小学校の3年1組には、マキという女王様がいる。クラスの女子は皆、彼女の顔色をうかがっていた。オッサンとあだ名される主人公は、そんなクラスの様子を少し冷めた目で見ていた。ところがある日、東京から一人の女の子がやってくる。エリカと呼ばれるその転校生の出現に、クラスの勢力図は一変してしてしまう。

本作は、スクールカースト・ミステリーである。スクールカーストという言葉も、いつの間にか、世に定着した。ここに書かれるような状況が「リアル」なのか、僕には分からない。実際そうだとすれば、なんだか大変そうだ。僕の学生時代にもそういうことはあったはずだけれど、ぼんやりしていたせいか、憶えがない。

ミステリーというジャンルにおいて、あるテーマが定番化するということは、それほど悪いことじゃない、と僕は思っている。定番化すると、似た雰囲気の作品が増える。またこのパターンかぁ、などと時に飽いてきたりもするけれど、似た作品が増えるということは、それだけ制約が増えるということでもある。同種の作品とおんなじことはやれないのだ。ミステリーでは制約が大切。その制約をいかに乗り越えてみせるか、どう読ませるか、が書き手の腕の見せどころになる。上手に飛び越えたら拍手喝采。書き手のハードルは上がるけれど、読者は楽しい。だから、定番化もそう悪くない、と思うのだ。

スクールカーストを描く本作は、どうだろう。

勘のいい人なら、トリックに大方の予想はついてしまう。僕も途中で、これは、とネタの見当がついてしまった。終わってみれば、大筋はその通り。だから、トリックや見せ方に、目新しさはあまり感じない。スクールカースト・ミステリーを、上手に飛び越えた作品かって言われると、多分ちょっと違う。

でも、十分面白くって、それがどうしてかって言うと、この作品には勢いがあるからだ。トリックには思いがけない捻りが、二つ三つと、加えられていて、そのサービス精神が、勢いが、物語を引っ張っていく。力で押し切った。そんな感じ。でも、勢いで読ませてしまうっていうのは、それだけで結構すごいことで、さすが難しい選考を勝ち抜いて、大賞を取っただけのことはある。勢いで唸らせるという方法もあるのだ。

エンタメ・ミステリーの佳作。

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